(写真=奥井 隆史/アフロ)
(写真=奥井 隆史/アフロ)

 一昨年の冬、僕が洛南高校視察時に学内を案内してくれた青年が桐生君だった。「ふーん、これが桐生君か」。特段、体が大きいわけでもなく、自信過剰でもなく、オーラを放っているわけでもなく…。素朴な高校生の彼は丁度その頃、高校レベルからトップスプリンターへと脱皮しようとしていた。

 そして、その数ヵ月後、彼は10秒01(100m)でジュニアの世界タイ記録を打ち立てる。日本でも歴代2位の偉業である。「でき過ぎ」と言えばあまり夢はないか。

 しかし、基礎体力、走法はほぼ完成の域に近づいている。体幹をしっかりと前傾させ、キープできる筋力に加え、しっかりと推進力を生み出す足の運び方は、名だたるトップスプリンターと比べても遜色ない。

 しかしまだ高校生、課題はある。というより、のびしろがあると言ったほうが良いだろう。四肢の動きを工夫することで、もう1段、トップスピードを上げることは可能だ。

 彼は今、秒速11.5m前後で走っている。例えば、9秒58の世界記録を持つウサイン・ボルトは秒速12m超。まだまだ世界の壁は高いが、何せ「2020年」が彼には待っている。東京五輪。その時、33歳になっているボルトの姿は競技場にはないはずだ。

 世界最高の舞台で、24歳の桐生君が僕らに、どんな夢を見せてくれるというのか。

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