
中国で文化大革命の嵐が吹き荒れていた1970年代、私は少なからず中国に関心を持っている大学生だった。週1回、世田谷日中学院に通い中国語を習っていた。中国語特有のリズムを覚えるために口ずさんでいた歌が「東方紅(トンファンフォン)」だ。
軍歌のようなメロディに乗って「東の空は赤く、太陽が昇り中国には毛沢東が現れた」という詞を刻む。自ら毛沢東思想に共鳴するはずもなかったが、振り返ると、日本と中国、欧米にまたがる国際関係論に興味を持つきっかけだった。
いま中国を、どう理解すべきか。ひとつの解は「大中華圏」という視点だろう。
中国は、もはや地図が示す中華人民共和国だけにとどまらない。世界の投資を呼び込む香港や台湾、東南アジアへの足掛かりとなるシンガポールなどを巻き込んで、ヒト、モノ、カネがネットワーク型の発展を遂げているからだ。
しかし、日本では短期的な日中関係に目を奪われる政治家や官僚、経営者が多い。それは表層的なプチ・ナショナリズムでしかない。
日本人女優たちも中国で長年活躍している。経済・金融、資源エネルギー、教育、文化――。100年経っても完結しない理論よりも、私たち一人ひとりが日米中のトライアングルの中で創造性を発揮していくことが、成熟した国家の証になる。
米国と中国がつくり上げていくであろう21世紀のアジア太平洋で、日本は米国の周辺国でもなければ、中国の周辺国でもない。より強い自立自尊の自覚を持てるか、いま問われている。
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