(写真=常盤武彦)

 私が彼に最初に出会ったのはヤマハの楽器デザイン担当だったときだ。彼は当時、22歳。新卒で入社してきた。世界を目指しているんだという話を聞いたことをおぼろげに覚えている。

 当時から彼にはデザインに対する信念があった。それは、「デザインこそが人を動かす」ということ。言い換えれば人を行動させるデザインを志向していた。

 彼は治安のよくなかった、ニューヨークの地下鉄をデザインの力で安全で清潔なものに変えた。券売機は故障が多発し、お金を入れても戻ってこないことが多かった。彼は先に行き先を指定し、最後にお金を投入する仕組みに変えた。使う立場に立った極めて彼らしいデザインだと思う。

 彼はヤマハを卒業した後、米アップル、米アイディオ等の最先端デザインを経て、ニューヨークで独立した。私は彼のいまの活躍を見て、本当に誇りに思う。