(写真=朝日新聞社)
(写真=朝日新聞社)

 井上康生君ほど評判のいい若者はいない。老柔道家たちが顔を火照らせて言う。「康生はいいよ」と。

 彼の優しさに、みな惹かれるのだ。ロンドン五輪の際、ある選手が決勝で負けた。控え室で康生は気落ちした選手を胸に抱き「おまえはよくやった」と号泣したという。この話は瞬く間に日本の柔道関係者にメールでまわり、名古屋にいる僕のところにもまわって来た。試合の数分後のことである。

 東京五輪中量級金メダリスト岡野功先生の名著『バイタル柔道』の新装版が発売された。岡野先生は我々の年代には伝説のスーパースターだが、中央柔道界と相容れず、龍ケ崎市に何十年も蟄居しているため、今ではその名を知る者は少ない。出版イベントにすぐに康生君が手を上げたらしい。こういういい話は全国の柔道関係者にまわる。

 康生なら――。暗い話が続いた日本柔道界だが、彼が男子監督に就いたとき一気にみなが華やいだ。康生! 日本の柔道家はみんな君のファンだぜ!

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