(写真=読売新聞/アフロ)

 京都の夏は暑いことで有名だが、その日は特別に暑かった。私はいつものようにノースリーブ姿で「暑い、暑い」とごねていたが、若宗匠は着物姿で凛と立っていた。7年ほど前、料亭「嵐山吉兆」で、雑誌の対談がセットされ、久しぶりに武者小路千家の次期家元(若宗匠)、千宗屋さんと再会した。

 そこで私は、芯は強いが、少年のような愛らしさも感じられる若宗匠のために花束と扇子を贈った。すると、お点前で返してくれた。静寂の空間に張り詰めた空気が流れた。時間はあっと言う間に過ぎていった。

 私達は「畳の空間」で繋がっている。彼は千利休から継がれる茶の湯に生まれ、私もまた室町期から脈々と伝わる華道家元の家に育った。だが、次代の「和」の担い手である私達は、西洋化する生活の中で、伝統をどう継承してゆくのか岐路に立たされている。若宗匠は挑戦の人。守るだけでは伝統文化は受け継がれないことを、誰よりも分かっている。