(写真=柴田謙司)

 「彼には当事者意識がある」。番組の取材で藤藪さんに出会い、こう感じた。

 和歌山・白浜の三段壁。自殺の名所である彼の地には、生に絶望した人々が訪れる。彼はここに教会を構え、死を決意してやってきた人々を保護している。身を投げる行為を思いとどまらせる活動に意味があることは言うまでもない。だが、彼の本当のすごみはその先にある。自殺の一歩手前まで落ちた人と、社会復帰できるまで共に暮らし、再生の道を探る。直面する問題に同じ目線で向き合い、話を聞く。時には厳しく諭すこともある。

 彼の言葉は心の奥底まで響く。それは彼自身が、かつて同じように生に絶望した経験があるからだろう。彼の持つ当事者意識こそ、自殺に追い込まれた者には救いの光となる。

 当事者意識を持つこと。今、日本が直面するあらゆる問題は、その地点からしか解決できない。そして彼はこの当事者意識を懐に携え、日々命を救っている。