(写真=千倉志野)

 総裁になっても若い頃と少しも変わらない。データ重視で論理的。私心なく誠実で「はったり」が大嫌い。だが、8月の記者会見では、「市場は常に優しい言葉を求めている。しかし総裁は真摯に正確に金融政策について話す。そのことが緩和的でないと受け止められることもあるのでは」という悩ましい質問が出た。

 市場が求めるのはグリーンスパン前FRB議長だろう。株価上昇の行き過ぎは容認するが大幅な下落は阻止する。その市場に優しい姿勢は、市場参加者に安心感を与え、歯止めなくリスクテイクを拡大して、それが金融危機につながった。

 目先の優しさが先行きひどく裏目にでるリスクは、市場相手の場合に限らない。政界には高めのインフレ率への期待が強い。しかし、政府債務の拡大に歯止めがかからない状況でインフレ圧力が高まり、長期金利が急上昇すれば、財政も多くの金融機関も破綻しかねない。金融政策の舵取りは至難だ。「私心のなさ」を武器に難局を乗り切ってほしい。