(写真=村田和聡)

 「2位じゃダメなんでしょうか」 ――。井上さんが開発を指揮したスーパーコンピューター「京」は、民主党政権の事業仕分けで蓮舫参院議員にこう指摘されて一躍有名になった。

 他メーカーがプロジェクトから撤退するなど逆風続きの中で、京は今年6月に演算速度世界一の座を獲得した。これはひとえに井上さんをはじめとする富士通開発チームの努力の賜物だ。

 スパコンの開発競争は熾烈を極め、半年も経たないうちに記録は次々と塗り替わる。井上さんはそういう状況を十分に理解したうえで、開発途中で記録申請に踏み切った。

 ただ、スパコンの性能は単純な演算速度だけでは表せない。恐らく技術者としては様々な葛藤に悩まされただろう。それでも今回はあえて1位にこだわって勝負したことに大きな価値がある。世界一と2位では世の中に与えるインパクトに天と地ほどの差があるためだ。そして彼らが獲得した栄冠は、東日本大震災で沈みがちな日本人に「誇り」と「自信」を取り戻させてくれた。