
創るべき未来はいったいあるのだろうか。そんな問いが私の心をよぎる。
束芋の作品には、明るい未来への展望といった、人類成長神話へと帰依していくような楽観はない。従来型のアートを否定するのでもなく、喧伝された日本のアニメやかわいさを揶揄するような視線に、その作品群は満ちあふれている。
未来とは、どんな時代にあっても見えないものだ。しかし未来とは夢見ることができると思える時代が続いた。共産主義の夢は儚く消え、自由、平等、博愛、も幻にすぎなかったと、人類は思い始めている。そんな美しい夢を見ていた頃に、アーティストの心が回帰していくとしても、美しい未来がない今となっては、仕方のないことだ。
絶滅しつつある、イメージ日本。銭湯、四畳半、入れ墨、浮世絵の色、それらすべてを否定しようとして努力してきた日本近代は、今、束芋のアートとなって世界の羨望を集めている。その作品群は、浮かれすぎた人類への警告のように、私には見える。
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