(写真=水野浩志)

 「業務スーパー」を経営する小売業者・神戸物産の創業社長。と、こう書いてもこの人を表す言葉として足りない。足りないどころか、やや誤解を与えるだろう。「小売業」という言葉がこれまで表してきたものを変えようとしている人だから。

 エジプトの砂漠に水を引き、大規模農地を開拓している。北海道むかわ町にやはり広大な農園を経営し、ジャガイモや大豆、ゴボウなどを栽培。単一農家としては日本最大のジャガイモ農家と言っていい。赤字に喘ぐ食品工場を次々に買収し、経営を立て直してグループ内に取り込んでいく。およそ小売業、「モノを仕入れて売る」人の姿ではない。

 目指すのは「製販一体」。売るために「作る」企業体だ。沼田は焦燥を隠そうとしない。「世の中はデフレと言われるが世界的には食料はインフレですよ。今は食料を輸入できていても、為替が円安に転じたら買えなくなる」。だから供給元を押さえる。

 価格競争に血道を上げる国内小売業界は眼中にない。世界経済の動きを見据えつつ、専ら考えるのは「どう売るか」より「どう作るか」。その先に、これまでない新たな小売業の形を生み出そうとしている。