(写真=山田哲也)

 世界が「天才」と称賛するロボット工学者、石黒浩。2007年、英Synecticsは「生きている天才100人」に選出している。自分とそっくりに作った人間型ロボット「ジェミノイド」の映像は世界の研究者のみならず、テレビの前に座る人々をも驚愕させた。

 「もうみんなロボットを持っている。携帯電話はロボットですから」。石黒はそう解説する。アンテナという触覚、そして会話を聞き取り、声も出てくる。記憶だってできる。その「機械」を人間の外見に近づけていくと「鉄腕アトム」のように好感度が高まる。ところが、それ以上人間に近づけて、ある時点を超えると、嫌悪感が襲ってくる。それをロボット工学の世界では「不気味の谷」という。天才・石黒はこの谷に落ちながら、それを世界で初めて乗り超える可能性を秘めている。

 人間の域により近づけるために、両者の境界線を探求し続ける。だから、彼は脳や認知科学の研究者、また哲学者とも共同研究を進める。ロボットが人間に追いついた時、人間の存在意義は何なのか。既に「工学」の域をはるかに超えた世界で、石黒の頭脳は格闘を続けている。