(写真=宮原一郎)

 昨年は固唾をのんで見守っていたが、今年は「どっちでもエエ」という感じだった。それは、山中さん本人がノーベル賞に執着していないからだ。

 iPS細胞(新型万能細胞)は素晴らしい研究成果だが、医療現場で生かされているわけではなく可能性の段階。「まだ早い」と本人が言うように、社会で役に立つようになってからの話だろう。

 神戸大学医学部を卒業後、整形外科医になった。ただ、大学時代にラグビーで手を骨折した影響で、思うように手術ができなかったという。それで、研究の世界に身を投じた。座右の銘は「人間万事、塞翁が馬」。本当に、何が幸いするか分からない。

 学者というと、気難しい印象があるが、至って普通で、一般人の感覚も持っている。人としての厚みがあるのも、打ちのめされた経験があるからだろう。彼はノーベル賞のためでなく、医療の発展のために動いている。その姿勢に共感するからこそ、彼とつき合っている。心底、素晴らしい人だと思う。