国際金融の世界で今、世界から最も尊敬と評価を集める日本人と言えば、黒田東彦・アジア開発銀行(ADB)総裁に違いない。大蔵省(現財務省)では早くから将来の財務官候補のプリンスと称されていた。国際通貨基金(IMF)への出向から戻った後は国際金融畑を長く歩み、国際局長時代はアジア通貨危機の対応で手腕を発揮。1999年に通貨政策を担う財務官に就任後は、多国間で通貨を融通する「チェンマイ・イニシアチブ」の実現やアジア債券市場の整備に貢献した。3年半という財務官の在任期間は歴代最長である。

 こうした豊富な実績もあるので、2005年のADB総裁就任直後から、黒田総裁は抜群のリーダーシップを発揮してきた。アジア太平洋地域の開発支援や地域経済統合の促進に取り組み、アジアが金融危機の影響に直面した2009年には、ADBとして過去最大規模の増資も主導した。その経験と信頼感から、米国や欧州の首脳からも一目置かれる名総裁だ。

 11月からADB総裁として3期目に入る。国と国との協力と足の引っ張り合いが続く国際機関で、長く総裁の任にあることのご苦労は想像に難くない。タイミング次第ではIMF専務理事就任の芽もあったのではないだろうか。そんな傑出の人物でありながら、気さくで、話好きな素顔は全く変わらない。