(写真=山本琢磨)

 「錬金術」を簡単に信じる者はいない。それが「新元素変換」と呼ばれる耳慣れない技術によって実現すると言われれば、なおさらだ。岩村が2002年に発表した実験結果は当初、専門家の間でほとんど相手にされなかった。何しろ電球などに使われるタングステンが、常温に近い温度で貴金属であるプラチナに変化するというのだから。

 岩村の発見は、今も物理学の常識から大きく懸け離れており、実験結果を誰もが納得できるように説明する理論もない。それでも限られた予算で再現実験を続け、セシウムなどの放射性物質を害の少ない物質に変換できる可能性を示した。

 原発事故に苦しむ日本にとって、原発周辺にまき散らされた放射性物質の処理は一刻も早く解決しなければならない課題。実用化へのハードルは高いが、岩村が取りつかれたように研究を続ける「新元素変換」に、多くの国民の期待がかかる。