(写真=山本琢磨)

 私が東京工業大学の資源化学研究所に助手として着任した1982年春、当時まだ東京理科大学の学部生だった工藤君は卒業論文のため私の研究室にやってきた。まじめな性格は当時から全く変わっていない。

 工藤君と私が専門とするのは「人工光合成」。その名の通り、人が作った特殊な触媒に太陽光を当てて、水から酸素と水素を取り出す技術だ。ただ、効率の良い触媒を見つけるには気の遠くなるような膨大な実験が必要で、海外では一時、研究が下火になったこともある。そんな状況でも工藤君は着実にデータを蓄積し、この分野で世界を大きくリードする存在になった。

 化石燃料の枯渇が危惧される中で、人工光合成は将来のエネルギー問題を解決する可能性を秘めた夢の技術だ。近年は欧米でも再び注目を集めており、研究開発競争も熱を帯びつつある。工藤君は若手のリーダーとして、日本の研究者を引っ張っていってもらいたい。