(写真=菅野勝男)

 最初に香川君を見たのは、彼がまだ高校2年生なのにセレッソ大阪に入団した時のこと。そして紅白戦をやったのだが、ボールコントロールが巧みで奪われない。そのうちブラジル人選手のブルーノ・クアドロスなどが騒ぎ出した。「あいつ、すごいよ」って。その後もチームに同世代の乾貴士という良きライバルがいて、磨かれていった。

 彼が日本代表に入って、何が変わったかというと「ゴールの意識」。それまで「決定力不足」と言われてきた日本サッカーだが、「(背番号)10番」の香川君がボールを持つと、相手が「ゴールを奪われる」という恐怖を感じている。アジアを中心に、世界は明らかに「カガワ」を恐れている。そこまで突き抜けたのは、「調子が悪い」と自ら公言して自分を追い込みながら、練習や試合に臨む精神的な強さではないか。普通の選手では、そんなプレッシャーには耐えられない。それでも「ここぞ」という時間帯にゴールを揺らす。そして、より高いステージに飛躍していく。

 そんな彼は、普段は至ってまじめ。僕が引退を決めた時、一緒に食事に行った。「8番を引き継いでくれないかな」。話の中でさりげなく言ったことを彼は覚えていてくれた。本当は14番をつけたかったのに。人の気持ち、空気が読める。そして、それに応える。観衆の声援がひときわ大きいのは、香川真司に声が届けば、その気持ちに応えてくれると確信しているからではないか。