ITベンチャー企業、チームラボを率いる猪子寿之が一躍名を馳せたのは2006年のこと。産経新聞社系の産経デジタルの取締役として、ニュースサイト「イザ!」の設計を手がけた。当時、新聞社系のサイトと言えば「記者が情報を一方的に提供する媒体」というスタイルが常識だった中、いきなりトップページに素人が書いたブログ記事を並べるなど、従来にない読者参加型の双方向メディアを構築した。その狙いは当たり、既存の大手新聞のニュースサイトと肩を並べるアクセス数を記録した。

 「ネットの普及によって到来した情報化時代には、かつての工業社会の常識は意味を失う」。そう、猪子は真顔で語った。例えば、トヨタ自動車の上位10%の社員が会社を辞めても、恐らくトヨタは潰れない。ところが、米グーグルの上位10%が退社してしまうと、間違いなくグーグルは経営危機に陥る。設備から人へ。企業が依存する主体の転換が、情報化時代の本質と喝破する。

  だから、新時代に企業が生き残るためには、技術力と創造力を磨かなければならない。ビデオアートからオフィスのデザインまで幅広く手がける猪子の嗅覚は、情報化時代の付加価値を常に模索している。