(写真 =赤川修也)

 脳を出入力機械のように捉えると、限界がある。感動など様々な要素が複雑に絡み合って、脳は機能している。木村さんの畑を見た時、複雑な生態系が生み出す美しさがあった。それに引かれて何度、足を運んだことか。

 これまでの農業では、農薬で害虫を駆除し、そこに肥料をまいて作物を作る。1つの側面から見ればそれは「効率的」ということになる。だが、甘みばかりを追求したリンゴは、点滴で育ったような味がする。農薬や肥料を使わない木村さんのリンゴを食べると、豊かな生態系の中で育った「本物」のうまさが口に広がる。一度食べたら忘れられない。だから入手が難しい。ぼくは1個1000円で売ってもいいと思っている。それでも飛ぶように売れるだろう。

 今、木村さんの影響力は農業分野にとどまらない。それは、小さい頃から詰め込み勉強に走る日本人への警鐘かもしれない。優れた人は、直感で本質を捉える。論理は後からついてくるのだ。優れた知性とはワイルドなものだということを木村さんは教えてくれる。