(写真=陶山勉)

 「この人は、日産自動車の強さがどこにあるのかを知り抜いている」。カルロス・ゴーンにインタビューした際にそう感じた瞬間があった。東日本大震災の発生直後、彼は滞在先のフランスからすぐに帰国。福島県いわき市にある工場に入った。東京電力福島第1原子力発電所にも近い、いわば「危険地帯」である。「外国人が逃げ出す中、なぜそうしたのか?」と聞くと、「私は日産の社長。なぜトップが真っ先に現場に入ることが不思議なのか」と逆に問いただされた。

 日本のモノ作りの強さは現場にある。彼はそれを知り抜いている。だからこそ、工場に率先して入り、社員を慰問した。その行動が、いかに現場を鼓舞したか。即席の演説台で熱く語りかける姿に、従業員は涙を流した。

 社長就任以来、数々の改革を断行し、日産を復活へと導いたゴーン。強力な指導者として君臨し続けている秘密は、一見「冷たい」とも見える改革の裏で、現場を大切にしていることにある。6月に発表した中期経営計画を、自分が出す最後の計画と発言した。「ゴーン最終章」が始まろうとしている。