(写真:Kei Uesgi)

 「みゆじ」の名が既に、音楽=musicそのものを感じさせる。日本とハンガリー、2つの祖国を持つコスモポリタンは2010年にデビューCDをリリース。21世紀を担うピアノの名手(ヴィルトゥオーゾ)として、大きな第一歩をしるした。

 東京・銀座にあるフランス高級ブランド「シャネル」では、店内で内外の若手音楽家をいち早く紹介する企画を続けている。金子三勇士を最初に聴いたのも、ここだ。何人かが登場したガラ・コンサートの中で、リストの「スペイン狂詩曲」を弾いた。驚いた。リストの音楽が生き物のように弾んでいた。

 金子は群馬県生まれ。6歳で単身ハンガリーへ留学、祖父母の家から音楽小学校へ通い、11歳(2001年)にして飛び級で国立リスト音楽院ピアノ科へ進んだ。リストを弾く時は両親と離れて暮らし、年上の同級生に囲まれ修業に明け暮れた日々のことを思い出すらしい。金子の涙と血がにじんだ響きは作り物ではなく、リストの人間性の本質に迫る。

 20世紀後半の国際コンクール乱立、音楽ビジネス拡大の中、本来は人間性(ヒューマニズム)発露の一形態であるべき再現芸術の分野にも過度の数値重視、物質主義が蔓延してきた。金子の演奏が漂わせる素朴で温かく、深い味わいにはリストの再現に限らず、音楽全般におけるヒューマニズムの復権を確信させるだけの力がある。