衰退する水産業、過疎化、震災復興――。三陸最大の水産加工会社である阿部長商店社長の阿部泰浩が直面する問題は、誰も解決できないものばかりだ。それでも、彼は立ち向かう。

 衰退する水産業を変えようと、魚食文化が広まりつつある海外で販路を拡大。国内より高値で取引される海外市場を開拓し、水産業を「儲かる産業」へと変革する。その実現に近づきつつある矢先、「3.11」が東北を襲った。

 宮城県気仙沼市の本社や工場はすべて津波で流された。震災後、遅々として進まない復興で廃業や従業員の解雇を選択する経営者が多い中、阿部は「1人も切らない」と宣言。関連会社を含めて800人近い社員を抱えるのに、雇用を維持すると腹をくくった。

 マイナスからの再出発。それでも、彼を慕う社員が手を取り合って厳しい現実に立ち向かう。目標は復興ではない。その先にある水産業の再興こそが、阿部の目指すゴールなのだから。

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