(写真=佐治邦彦)

 「これ、どないですやろ」。少し恥じらいながら、自ら握った皿をそっと差し出す。「社長、惜しいわ。食感が足りんから、レタス足すべきやな」。そんな私の指摘に嫌な顔一つせず、そそくさと厨房に戻って再び寿司を握る。「これやな!」。最後には2人で笑い合って新商品が完成する。

 回転寿司チェーン「スシロー」の商品開発を依頼され、2年が経った。回転寿司業界で3位の座から競合を追い抜き、トップに君臨する「回転寿司王」。けれども驕った部分が一切ない。社長室にこもらず、率先して厨房に入り、寿司を進化させている。

 回転寿司の要は、寿司のネタである。それを貪欲に進化させ、価格以上のネタを提供している。客を裏切らず、常に客を見つめる。同じ食を扱う職人として、その姿勢には共感と信頼を覚える。

 「スシロー」は今後、海外進出や多店舗展開を強化する。豊崎さんが今の笑顔と進化への貪欲な姿勢を失わない限り、業界トップに君臨し続けると、信じている。