(写真=菅野勝男)

 かなり前から噂を聞いて、一度は行ってみたいと思っていたんですが、ようやく念願がかなったのは3年前。1皿目から「これは本物だ」と確信しました。

 もう20年も前になりますが、「辰巳琢郎のくいしん坊!万才」で日本各地の料理を2000以上、食べる機会を得ました。その後も「食」による地域おこしはライフワークのようになり、料理の良しあしを見極めることには多少の自信があります。話題の店がおいしいかというと、決してそんなことはない。でもアル・ケッチァーノは掛け値なしにうまかった。

 とにかく奥田シェフのお皿はどれも楽しい。おいしいのはもちろんですが、一つひとつの食材を物語とともに頂くからその魅力が何倍にもなる。これこそ料理です。

 影響力も素晴らしい。藤沢カブや民田ナスなど庄内の在来野菜は彼が光を当てなければ、消えていても不思議ではなかった。でも、アル・ケッチァーノが人気店になり、在来野菜が再評価されたことで、それを作る生産者が増えました。1つのレストランを軸に、庄内の農業が蘇ったわけです。

 庄内を「食の都」にすることが夢だったそうですが、その夢は既に十分かないました。次の使命は、放射能汚染の風評被害に苦しむ日本の食材を世界に発信すること。後進の育成にも熱心です。「目利きを育てる水族館を造る」なんて突拍子もないことを山形なまりでサラリと言う。彼が活躍するフィールドはまだまだ広がっていきますよ。