(写真=都築 雅人)

 2009年、専務だった伊東孝紳氏が福井威夫前社長の座を継ぐことが明らかになった時、多くのホンダウオッチャーが「変化」を期待した。その前年のリーマンショックで国内自動車メーカーは大打撃を受け、業績回復に邁進していた時期だ。

 ホンダは、環境技術への取り組みを前面に出し、「インサイト」を投入。次代への布石を打った。だが、その決断には、こうした疑問がつきまとう。それはホンダらしいクルマなのか、と。「らしさの希薄化」である。既にホンダはF1撤退によって「らしさ」の中核を失った。熱心な「ホンダ信者」の不信と不安を解消し、「らしさ」を再構築することは伊東社長に課された難解かつ重大な責務である。

 就任から約2年、率直に言って、変化はまだ感じられない。インディカーレース撤退など、「らしさ」の減退が続く。それでも信者は忘れない。就任時の「任期を終えるまでに『さすがホンダ』と言われるクルマを出す」との発言を。彼は「隠し玉」を持っているはずだ。心を揺さぶる、いい意味でのプロダクトアウト。誇らしい発表会での姿を夢見ている。