(写真=竹井俊晴)

 ニトリホールディングス社長の似鳥昭雄氏の生涯を、同社のコマーシャル「お、ねだん以上。」にもじれば「お、御苦労以上。」だ。一業を興した人にはみな、苦労と知恵と勇気と幸運の物語がある。中でも似鳥昭雄氏の人生はすさまじい。

 1944年3月8日樺太生まれ。生後1年半で母子で北海道に引き揚げた。父はシベリアに連行される。この出だしからして劇的だ。

 北海道の農家を転々とした後、札幌で母親が闇米商売を始める。学校の成績は60人中55番。短大を出て住み込みで広告代理店に入ったが、花札ばかりしていた。父が興したコンクリート会社でも働いたが、飯場が火事になり勤められない。一時は歌手も目指したが、すぐにあきらめた。結局「商売しかない」と、1967年、札幌に家具店を開いた。戦後2度目の創業ブームの時期である。

 経営哲学は「進んで損をする」。実際、猛烈な値下げを繰り返し、この業界では圧倒的な首位を占めている。それには仕組みがいる。メーカーからの直接仕入れと従業員が極度に少ない店作り。そこにこの人の情熱と正義感が表れている。「お、ねだん以上。」は、その成果なのだ。