(写真=丸毛透)

 10億円の私財を投じて、「自然エネルギー協議会」を立ち上げる――。

 孫さんの再生可能エネルギーへの取り組みを聞いて、「さすがだな」と思った。未来の世界で必要となることを思い描き、今やるべきことに落とし込んで考え、素早く行動する。ブロードバンド(高速大容量)がソフトバンクによって加速度的に広まったように、エネルギーの世界も彼が変革の波を起こすだろう。少なくとも、10年後に産業史を振り返れば、そういうことになっているに違いない。

 大胆さと緻密さ――。

 これが「孫正義」という希代な企業家の実像である。本来ならば相いれない性格だが、構想の大胆さと、戦略の緻密さは、創業と成長を同じトップの下で成功させるには、不可欠なことだと思う。

 彼はその両面を兼ね備えている。それを知ったのは、ゴルフ場でのことだった。ゴルフはその人柄が如実に表れるスポーツである。攻撃的な性格の人は、のっけからドライバーを思い切り振り抜く。慎重な人は、アイアンで細かく刻んでトラブルを避けようとする。正解はない。その人柄がプレーに表れるだけだ。

 孫さんは一言で表現すると「気持ちいい」ゴルフをする。ミスは少ない。アイアン、パットとも手堅く決める。だが、小さくまとめるわけではない。時に、大胆にドライバーを振って攻める。

 さて、そう観察していた私も、孫さんから大胆なご提案を頂き、すっかり魅了されてしまった。初対面がゴルフ場だったのだが、そのわずか数カ月後、会社に突然電話がかかってきた。僕はネットでアパレル商品を販売しているのだが、受話器の向こうから孫さんの興奮した声が響いた。「一緒に中国ビジネスをやろう」。

 彼が中国進出構想をひとしきり語り終わった時、僕はすっかり気分が高揚していた。そして決め台詞。「洋服のことはよく分からないから頼む」。もう、こちらは「はい」と返すしかない。まさに大胆不敵。1ホール目から、バーディーを決められた感じだった。でも、こちらとしても渡りに船。この人の下でなら、雇われてもいいなと思った。生涯、初めてですよ、そんなこと。