(写真=高木茂樹)

 目の前には人工林とは思えない光景が広がっている。三重県紀北町の「大田賀山林」。国内有数の林業家、速水林業が所有する山林だ。「林業とは光を管理すること」。そう速水が語るように、適度に間伐されたヒノキの山林は下草が生い茂り、多様な植生が根づいている。

 慶応大学法学部卒業後、父が経営する速水林業の経営に関わった。戦後、父は広葉樹の低木や下草を残した“美しい人工林”を造り上げた。その薫陶を受けた速水亨は、大型機械の導入など経営の効率化を推進する一方で、持続可能な森造りに尽力してきた。

 2000年に国際的機関、森林管理協議会(FSC)の認証を国内で初めて取得した。自然環境に配慮した森林管理と効率的な森林経営を両立させている。トヨタ自動車が三重県大台町に取得した山林の管理を速水林業に任せたのも、速水が持つ哲学と経営手腕を高く評価したためだ。

 日本の森は荒れている。林業経営も成り立たない。だが、速水の造る森に、林業の明日が垣間見える。