(写真=菅野勝男)

 “突破力”というのは彼女のためにある言葉ではないかとさえ思える。山口絵里子さん。2007年にどうしても彼女に会って話を聞きたいと思い、申し込んで3カ月目にやっと会えた。バングラデシュでジュート(黄麻)のバッグを作り、日本で販売しているマザーハウスの代表取締役社長である。

 山口さんは1981年生まれで、私がお会いしたのは27歳の誕生日を迎える直前であった。とても魅力的で、自信に満ちた話し方をする女性であったが、この時、マザーハウスを創業して2年目だった。

 その彼女は、何と小学校の時はイジメられっ子で、男子児童に連日のように暴力を振るわれていた。給食も横取りされる対象であった。こんな日が続けば、誰だって登校拒否に陥ってしまうはずである。だが、山口さんは“逃げたい。でも、逃げてはいけない”と自分に言い聞かせて、登校拒否を克服した。

 その後、中学生に上がると、“強くなりたい”と考えて、柔道部に入った。高校は柔道の名門校だった工業高校に入り、男子生徒の中で猛練習をして日本で7位になった。そして、高校3年生の9月から受験勉強に取り組んで、誰からも無理だと言われた慶応大学に合格した。

 大学では竹中平蔵ゼミに参加し、そこで“世界にはなぜ豊かな先進国と貧しい発展途上国があるのか”と強い疑問を抱き、アジアの最貧国であるバングラデシュに飛び、現地の大学院に入学してしまった。すさまじい決断力と行動力である。

 バングラデシュで山口さんは輸出の90%を占めるジュートと出合う。このような素晴らしい特産品があるのに、なぜバングラデシュはアジアの最貧国なのか。世界の先進国はジュートを思い切りやすく買い叩き、自国でバッグを作り、高く売っていたのである。

 そこで、山口さんはバングラデシュでバッグを生産して日本で売ろうと考えた。そして、実行する。だが、最初はけんもほろろで誰も相手にしてくれなかった。やっとバッグを作ってくれる工場を見つけたものの、だまされてカバンもカネもなくなるということもあった。

 すさまじい突破力である。裏切られ、逃げられても絶対にあきらめない。現在では、8店舗まで店を広げているが、山口さんの目的は店の規模を増やすことではなく、貧困にあえぐ国々を搾取される標的から解放することである。