スズキと中国の重慶長安汽車が合弁事業の解消で基本合意したことが日経ビジネスの取材で明らかになった。スズキは中国でのもう一つの合弁事業も今年解消しており、これで中国での四輪車生産拠点がなくなることになる。2012年には米国の四輪車市場からも撤退しているスズキ。米中2大市場を捨てて向かうのは金城湯池のインドだ。
日経ビジネス2018年8月27日号より転載

スズキが世界最大の新車市場、中国から遠ざかろうとしている。折半出資する中国国有自動車大手、重慶長安汽車との合弁を解消することで両社が基本合意したことが日経ビジネスの取材で明らかになった。スズキが合弁会社の重慶長安鈴木汽車(長安スズキ)の保有株を長安汽車に売却する。
長安汽車を監督する中国共産党・政府の了承が得られ次第、具体的な手続きを始めるとみられる。早ければ年内にも売却が完了する可能性がある。
合弁解消後も、長安汽車側はスズキからライセンス供与を受ける形で、当面はスズキのマークを付けた乗用車を生産する見通し。長安スズキは数千人の従業員がいるとみられ、「スズキ車の生産を一気にやめると雇用問題に発展しかねない」(長安汽車関係者)ためだ。長安汽車側はライセンス生産で当座をしのぎながら、工場の活用方法を探る構え。販売に力を入れる独自ブランドの乗用車の増産や、他社との新たな提携などが想定される。
長安スズキは1993年の設立で、スズキが日本で培った軽自動車技術をベースに、安くて小さな乗用車を中国で普及させる役割を担ってきた。スズキが日本の軽自動車市場で足場を築いた「アルト」の派生車(中国名、奥拓)は中国でも人気を博し、地方都市ではタクシーとして使われる時期も長かった。
中国の自動車産業の勃興期に小型車を広める役割を担った長安スズキ。だが、90年代後半以降、トヨタ自動車やホンダなど世界大手も続々と中国市場に進出。消費者の所得水準の向上に伴い、より大きなセダンやSUV(多目的スポーツ車)の販売が伸びる中、小さなクルマを得意とする長安スズキの対応は遅れた。小型車の市場でも奇瑞汽車や浙江吉利控股集団など新興民営自動車メーカーとの競争が激化、販売低迷が続くようになる。
車種の展開力が限られるスズキにとっては、94年に国有ヘリコプターメーカーの昌河飛機工業などと設立した江西昌河鈴木汽車(昌河スズキ)とのすみ分けも重荷になった。長安スズキにはアルトのほか、小型車の「スイフト」や「SX4」などを投入する一方、昌河スズキの主力車種は小型車の「ワゴンRワイド」くらい。品ぞろえの乏しさが両合弁会社の販売力をそいだ。
スズキの中国の販売台数は2018年3月期には10万5000台と前期より3割近く減った。15年3月期の25万台と比べると半分以下だ。総じて順調に拡大してきた中国の新車市場の中でスズキの不振は際立った。
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