自動運転時代でも「系列」の強み生かすトヨタ
自動車メーカーの中でも「系列重視」の姿勢が強いとされるトヨタ自動車。ソフトバンクグループやAI(人工知能)開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)などデジタル技術に強みを持つ「仲間」を増やす一方で、これまでの「系列」メーカーとのつながりも無駄にはしない。
10月24日に日本市場で発売した高級車ブランド「レクサス」の中型セダン「ES」の新型車。すでに米国や中国市場などで投入済みだが、日本での販売に合わせて電子化したサイドミラー「デジタルアウターミラー」を採用した。量産車では世界初搭載という。
従来のサイドミラーの位置にデジタルカメラを置き、撮影した映像を室内にあるディスプレーに表示する仕組み。デジタル処理なので、夜間の画像を明るくしたり視界を広げて死角を減らしたりできる。
安全性の向上だけがトヨタの狙いではない。カメラで捉えた画像は「現時点では一定期間後に自動的に消去する」(ES開発責任者の榊原康裕氏)というが、将来は自動運転に不可欠な3D(3次元)地図作りに役立つ可能性がある。現在も衝突安全などを目的としたカメラを搭載しているクルマはあるが、これに側面からの画像データも加えれば価値は高まる。榊原氏自身、その可能性を否定しなかった。

関係の深い4社が集まる必然
今回の電子サイドミラーは、ECU(電子制御装置)をデンソーが、サイドミラー部分の筐体は東海理化が、カメラとディスプレーはパナソニックが開発した。いずれもトヨタと関係の深いサプライヤーだ。「4社の技術者が集まって特別開発チームを編成し、短期開発を目指してきた」(榊原氏)。電子ミラーが認められる法改正が日本であった2016年6月に世界初の量産車搭載を決断、一気に開発を進めたという。
関係が深いからこそ各社の強みも理解しているトヨタ。部品メーカーからすれば、「系列」であるが故にトヨタとあたかも一心同体で開発できるメリットは大きい。
もっとも、デンソーなどの3社が開発を分担できたのも、トヨタが必要とする技術やノウハウを備えていたから。トヨタは自動運転時代で優位に立とうと、開発スピードを上げる姿勢を強めている。新しい技術領域に対応できない部品メーカーは系列であろうと、ふるい落とす日が来るはずだ。ここにも部品再編の芽は潜んでいる。
(池松 由香)
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