長く「系列」に縛られていた国内の自動車部品業界に再編の波が押し寄せる。日立製作所がクラリオンの売却を発表。カルソニックカンセイはイタリアの部品メーカーの大型買収を決めた。ガソリン車から電動車への技術シフトが進む中で繰り出される世界再編劇。勝算はあるのか。

日経ビジネス2018年11月5日号より転載

カーナビはスマホの普及で需要が低迷

 「日立の自動車事業は得意とする(車両の)制御の分野に集中する」。10月26日、カーナビゲーションシステムなどを手掛ける子会社、クラリオンを仏自動車部品大手フォルシアに約900億円で売却すると発表した日立製作所。その狙いを西山光秋CFO(最高財務責任者)はこう語る。

 1940年に前身企業が設立されたクラリオンはカーステレオや音声誘導式ナビゲーションといった車載機器の市場を切り開いてきた老舗だ。2006年に日立傘下に入り、電子化が進む自動車の中核製品を担う役割が期待された。だが、主力のカーナビは地図アプリを搭載したスマートフォン(スマホ)の普及でコモディティー化が進む。

 クラリオンが期待をかけたのがカメラ技術を生かした自動駐車システムだ。将来の自動運転につながるデジタル技術を武器に新市場を切り開く戦略だった。日立もグループ内でこの技術を生かしながら部品事業の拡大を狙ったが、技術革新のスピードが速まる中では「全方位でもって自動運転(の製品開発)を進めるのは難しい」(西山CFO)。

 そうした中でクラリオンに目を付けたのが仏グループPSAが大株主のフォルシアだった。ダッシュボード、シートなどの内装品が主力で、自動運転向けの次世代コックピット製品も手掛ける。クラリオンのデジタル技術と融合すれば次世代車領域で優位に立てるとみた。クラリオンにとっても、世界大手の傘下に入った方が磨いてきた技術を生かせると判断したようだ。

強まる生き残りへの危機感

 日本の自動車部品業界に再編の波が押し寄せる。これまでは特定の完成車メーカーとの取引を重視する「系列」に縛られがちだったが、自動運転など新領域が続々と立ち上がるなかで、生き残りへの危機感も強まる。

 日立の発表の4日前にはカルソニックカンセイがイタリアの自動車部品大手マニエッティ・マレリを約8000億円で買収すると発表した。カルソニックカンセイは熱交換器やカーエアコンなどを得意としたかつての日産自動車系部品大手。17年に米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の傘下に入り、次世代コックピット製品の開発にも力を入れていた。