膨大なユーザー数がカネを生む源泉
●グラブのビジネスモデル

 グラブではグラブの移動サービスを使うたびに、1シンガポールドル当たり8ポイントがたまる(現金使用時)。たまったポイントは一定量になると「お金」と同等の価値があり、提携先のECサイトや飲食店でも使える。一般会員なら2400ポイントで次の乗車が5ドル分オフになる。提携先にはコーヒーチェーンのスターバックスやオンライン音楽配信のスポティファイ、シンガポール航空や地元有名レストランなどが名を連ねる。「ユーザーがそれぞれの生活スタイルに合わせて選べるように提携先をさらに拡大中」(グラブ)だ。

 そうして広げてきた「グラブ経済圏」はすっかり、ASEANの消費者に根付いている。

 「毎日、グラブの配車サービスを使っている」。こう話すのは、シンガポール在住のイヴォン・イェオさん。シンガポールは地下鉄やバスなどの公共交通手段が充実しているが、毎日の通勤にグラブを使っているという。夜間に飲食店で働いているため、「時間を気にせずに呼べて安全だから」だ。

 「ポイントを使うのが楽しい」という。飲食店でも使えることは知っているが、イェオさんはグラブの移動サービスに使う。「移動を安くできるので、ついまた使ってしまう」

既定の場所で呼ぶと来る「GrabShuttlePlus」は実証実験中だ

 ある米国人移住者も「同じタクシーに乗るならグラブでポイントをためなきゃ損」と言い切る。ウーバーは需給状況によって運賃のレートを変動させるが、グラブは一定レートを採用する。値段は一般のタクシーより少し安い。これもユーザーを魅了するポイントだ。

「現地主義」に自信

 利用者を引き付ける様々な工夫を凝らしているとはいえ、中国や米国などでも似たようなサービスはたくさんある。グラブはそうした地域からモバイルサービスを東南アジアに持ち込んでいる面もある。ASEAN域内でも、インドネシアで利用者を増やしてきたゴジェックなど手強いライバルも出てきている(上の囲み記事参照)。激しい競争の末に、グラブが敗れてしまうことはないのか。

 「その可能性は低い」とグラブ社長のミン・マー氏は強調する。ソフトバンクから送り込まれた同氏の自信を支えるのがグラブに根付く「現地主義」だ。

 ASEANは、1人当たりGDP(国内総生産)が日本以上のシンガポールから40分の1以下のカンボジアやミャンマーなど、経済発展の度合いが異なる国々の集まりだ。

 多種多様なニーズを満たすため、グラブは進出した国に開発拠点を構える。現地採用のエンジニアと現地事情を勘案しながら、よりよいサービスの創出につなげる。配車アプリなど、一見、同じように見える移動サービスでも、国ごとに細かく変えているのだ。

 2年半前にグラブに入社したフィジー出身の米国人、ジェラルド・シング氏がインドネシアでの経験を振り返る。配車アプリの開発に向けて、まず取り組んだのが、詳細なデジタル地図の作製。利用者が道路の舗装状況などに応じて、四輪車や二輪車のタクシーを呼び出せるようにするためだ。

 シンガポールのタクシー配車サービスは、四輪車のみ。「その国その国の事情を心底、理解していないとグラブが提供するサービスは生まれない」。シング氏はこう強調する。

 グラブペイを広げるにも、各国の財閥や銀行、金融機関との協業のベースがある。金融分野は各国で規制の内容も異なるため、現地で決済サービスを提供するには、その都度、パートナーと組む必要がある。その手間をグラブは惜しまない。