シンガポール発のユニコーン

 事実、グラブのアプリのダウンロード数は今年5月時点で約9900万件に上る。グラブで投資案件を扱うグラブベンチャーのトップ、ルーベン・ライ氏は「ユーザー、提携先企業、当社の全てが利益を見込める理想的な『ウィンウィンウィン』の事業になる」と自転車シェアサービスに期待を込める。

 米国のハーバード・ビジネス・スクールの級友だったマレーシア出身のアンソニー・タン、タン・フイリン両氏が2012年に設立したグラブ。タクシーの配車サービスを軸に事業拡大にまい進する。14年にはソフトバンクグループから2億5000万ドル(約280億円)というグラブにとって初めての大型の資金調達に成功。その後、ソフトバンクから社長の派遣も受け、経営を軌道に乗せた。今年3月には米ウーバーテクノロジーズからASEAN事業を買収すると発表。事業基盤を固めた。

 配車サービスを始めたきっかけは、CEO(最高経営責任者)を務めるアンソニー氏がマレーシアに帰国中、海外からやってきた友人から聞いた「タクシーに乗って怖い思いをした」という話だったという。カネをだまし取られたり、危険な目に遭ったり。マレーシアに限らず、ASEANではまだまだタクシーのサービスの質は低い。

 アンソニー氏らは普及し始めたスマホを使って、安全な移動を提供するタクシー配車アプリを思いつく。まず、マレーシアで事業を立ち上げ、13年にはフィリピンとシンガポールに進出。14年にはベトナムとインドネシアでもサービスを始め、同年には拠点をシンガポールに移した。

 タクシー配車にとどまらず、ウーバーと同じように一般乗用車を使った移動サービスや、二輪タクシーへとサービスの幅を広げていく。現在ではヒッチハイクや自転車シェアなども含め10種類以上のサービスを提供(上の右下の図)。対象地域は8カ国217都市に及ぶ(右上の地図)。グラブのアプリを使うドライバー数は240万人超。昨年11月には創業から数えて計10億件の乗車を達成し、配車アプリでは「シンガポールやインドネシアなど6カ国でトップシェア」(同社)という。

ASEANでトップのシェアを誇る
●グラブが「移動サービス」を 提供する地域
消費者がニーズに合わせて手段を選べる
●グラブが提供するサービス
米ウーバーが自家用車の配車サービスを中心とするのに対し、グラブはタクシー会社とも提携してタクシーを配車。渋滞に巻き込まれにくい二輪車や価格の安い回遊シャトルバスなど、あらゆる移動手段を用意する