既存の協業関係を超えた仲間づくりが活発に
●国内の自動車メーカーと通信会社の関係
タッグを組んだソフトバンクの孫正義会長(左)とトヨタの豊田章男社長

 だが、業界内ではその言葉を額面通り受け取る向きは少ない。孫氏が近年、自動車メーカーを先回りするように移動サービスや自動運転車に関わるテクノロジー企業への投資を急いできたからだ。

 例えば米国のウーバーテクノロジーズや中国の滴滴出行、シンガポールのグラブ、インドのオラといった世界のライドシェア(相乗り)サービス大手に巨額出資してきた。他にも運用額10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などを通じ、自動運転車に必要な画像認識の技術や半導体、地図データなど有力なテクノロジー企業に出資している。自動運転や移動サービスにかかわる分野をソフトバンクは押さえつつある。

 「(トヨタが出資を決めた企業の)ドアを開けると、いつも孫さんが先にいた」と、トヨタの豊田章男社長も認める。生き残りをかけて新たな技術を求める自動車メーカーにとって、ソフトバンクは避けて通れない存在となっているわけだ。トヨタが今回の協業に踏み切ったのも、ソフトバンクを通じてライドシェア大手などとの連携強化を図りたい狙いがあるとみられる。

組む相手はまだ探り合いか

 もっとも、新会社の資本金は20億円。社員は技術系を中心に30人程度にとどまる。業界内からは「派手に発表した割には規模が小さい。まだお互いに探り合いの段階なのだろう」との声も聞こえてくる。資本金は将来100億円に引き上げる予定とするものの、上の囲み記事にあるように、移動サービスは海外勢が業界の垣根を越えて開拓を急いでいる分野。そのスピードに伍していける保証はない。

 ソフトバンクの牙城であるホンダのコネクテッドカー向け通信サービスでは17年前半、NTTドコモが水面下の提案活動をホンダに仕掛けて善戦した経緯がある。業界秩序を壊したようにも見えるソフトバンクだが、自動車業界を舞台とした国内通信各社の陣取り合戦が終わったとみるのはまだ早いかもしれない。

(高槻 芳)