排気量税制の限界か

 エンジンを“アップサイジング”して環境性能の向上につなげる取り組みは、ディーゼルエンジンにも及ぶ。ディーゼルを大排気量化して排ガス性能の向上に結びつけたのがマツダだ。

 2018年5月に部分改良した「CX-3」に搭載したディーゼルエンジンで、排気量を1.5Lから1.8Lに増やした。排ガスに占める窒素酸化物(NOx)の発生量を大きく減らす。

 この10年にわたり自動車開発の大きなトレンドだった“ダウンサイジング”は一段落し、今後は“アップサイジング”がキーワードになっていく。

 なお自動車メーカー各社は、大排気量化を「ライトサイジング(排気量の適正化)」と呼ぶことが多い。“アップサイジング”と呼ぶことで、動力性能の向上に主眼を置いたエンジン改良と消費者に捉えられがちな点に配慮する。

 大排気量化で燃費や排ガスの性能改善につなげる手法の最大の課題の一つが、税制である。例えば日本では、排気量が増えるにつれて毎年支払う自動車税が上がる。税額の増加分を、燃費性能改善に伴う燃料費の低下分で補うのは困難だ。

 スバルのように排気量を2.0Lから2.5Lに増やすと、自動車税は3万9500円から4万5000円へと毎年5500円上がる。マツダのディーゼル車の場合は1.5Lから1.8Lに増やしたために毎年5000円増である。マツダの技術者は、「大排気量化に伴う税金の増額分を燃費性能の改善分などで取り返すのは困難」と認める。スズキの場合は、大排気量化の範囲を1.0~1.5Lの枠内にとどめたために増税はない。

 一昔前は排気量が大きい車両ほど環境負荷が大きく、排気量に応じて税額を上げることに妥当性はあった。ただ“アップサイジング”の潮流が進むと、排気量と環境性能は結びつきにくくなる。三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストの杉本浩一氏は、「排気量税制を今後も継続するのは難しくなっているのではないか」と指摘する。税制で環境負荷の低い車両の普及を後押しするのであれば、排気量ではなくCO2排出量などに応じて課税する法改正が必要になる。

(「日経Automotive」2018年10月号18~20ページを再編集しました)

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