「もしトラ」が、現実のものになりました。今回の大統領選挙の結果をどう見ますか。

安井 明彦氏(以下、安井):今回の選挙は「嫌われ者同士の戦い」と言われていました。勝敗を分けたのは「注目」だと個人的に感じます。

安井 明彦(やすい・あきひこ)氏
みずほ総合研究所 調査本部欧米調査部長 1991年東京大学法学部卒業、同年富士総合研究所(当時)に入社、97年在米国日本大使館専門調査員。みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長などを経て、2014年から現職(写真:北山 宏一)

 選挙戦では、序盤からトランプ氏の過激な言動に注目が集まりました。それを見た米国民の中で、「これでは大統領には向かないだろう」という感情が芽生えてきた。つまり、序盤から中盤はトランプ氏への信任投票に近いものがあった。その結果、ヒラリー・クリントン氏の優勢が続いた。

 ところが、選挙前になって、本当にヒラリー氏が大統領になるかもしれないとなった時点で、注目がヒラリー氏に集まるようになった。そして「この人でいいのか?」と有権者が感じ始めた。選挙戦がヒラリー氏の信任投票へと変わったときに、また「メール問題」が勃発。そこで形勢が逆転したのではないでしょうか。

 「最終的に注目が集まった嫌われ者が負ける選挙」だと感じます。

議会も共和党が上下両院を制したが…

トランプ氏の考えや実力が投票に結びついたわけではない。

安井:そうですね。ヒラリー氏の最大のウリは「トランプじゃない」点だった。逆に言うと、それ以上のウリがなかったから負けた。トランプ氏の熱狂的な支持者には、民主党政権8年間で蓄積した不満があります。

 一方、ヒラリー氏は基本的に現状維持の政策を掲げていた。不満を持つ人たちにそれは通じない。政治家としての実績を持つヒラリー氏より、政治家でないトランプ氏を選んだ。ここに、大きな変化への期待が表れている。