前泊博盛(まえどまり・ひろもり)氏 1960年、沖縄県宮古島市生まれ。明治大学大学院博士前期課程(経済学)修了。1984年に琉球新報に入社し、社会部や政治部の記者として、防衛省、外務省、旧沖縄開発庁の取材に従事。編集委員、論説委員長を経て、2011年から沖縄国際大学経済学部教授。専門は基地経済の研究。沖縄からの基地撤廃を訴えている。

1カ月前の想定の中の話が、本当に現実になってしまいました。どのように受け止めていますか。

前泊博盛氏(以下、前泊):人格・品格を備えて初めて、風格を備えた政治家になる 、というのが私の持論です。トランプ氏は残念ながら品格は皆無だし、人格にも疑いがある。誰もが最後に勝つのはヒラリー氏だ、と思っていたでしょう。それだけ米国が劇薬を求めているということなんでしょうね。

 ヒラリー氏が富裕層への反発の標的になったことがまずかった。フィリピンの大統領選を見ても、ポピュリズムの台頭が起きているのは間違いない。日本は民主党政権で失敗したのでもう懲りているでしょうが。

大統領になっても、米軍駐留経費の負担増を求める方針は変わらないと思いますか。

前泊:ポストが人を育てることはある。それなりの言動をするようになると期待したい。日本の負担金の多さや日米安保の実体を学んでどう変わるか。ただ、トランプ氏が唱えている日米安保の片務性、つまり米国だけが日本の防衛義務を負っているという指摘には理がある。日本へ何らかの応分負担を求めてくるでしょう。

沖縄はどう行動すべきだと思いますか。

前泊:ヒラリー氏が当選していれば、沖縄政策の現状維持は明らかだった。トランプ氏はまだ未知数で、カードを出し切っていない。翁長(雄志)知事もすぐには動き出せないでしょう。

 ただし、変化はチャンスに変えることができる。沖縄が米軍基地問題という長年の宿痾から逃れるチャンスが生まれるかもしれない。おそらく米国の国益委員会は新たな対日本、対中国、対北朝鮮、対アジアの枠組みを考え出すはずだ。昨年開設した県ワシントン事務所を活用して、有効なロビー活動を展開することが重要だ。

どのような具体策がありますか。

前泊:私が従前唱えているのは嘉手納飛行場の経済拠点化だ。例えば沖縄の地理的優位性を生かして、米ボーイングのアジアのネットワークにおける整備拠点にするというのはどうだろうか。

沖縄にトランプ大統領誕生によるリスクはないのでしょうか。

前泊:もちろんある。日米安保の双務性が唱えられるようになれば、沖縄における自衛隊の配備増強が進む可能性だってある。沖縄の軍備強化は、紛争時に第一に狙われるリスクを増やすことに繋がる。

(聞き手:寺岡 篤志)
在沖縄米軍基地の全廃を訴える前泊博盛・沖縄国際大学教授には、特集「もしトランプが大統領になったら…」の中で、米大統領選でトランプ氏が勝利した場合の影響などについて語ってもらっています(トランプの請求に日本は従うことしかできない/2016年10月18日公開)。併せてこちらもお読みください。