笹川平和財団特任研究員 渡部恒雄氏に聞く

渡部恒雄(わたなべ・つねお)氏
笹川平和財団特任研究員
1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師に。その後、米国留学。ニューヨークのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチで政治学修士課程修了。1995年に米・CSIS(戦略国際問題研究所)入所。日本の政党政治や外交政策、米国政治、アジアの安全保障、日米関係を分析。三井物産戦略研究所主任研究員、東京財団上席研究員などを経て現職。

 トランプ氏の経済政策は、本当に実現できるのかと思うようなものが多い。NAFTA(北米自由貿易協定)離脱のような言い方などはその最たるものだ。

 しかし、グローバル化の進展とともに広がる格差の下方に置いて行かれた人たちは、何かを変えてくれると期待した。何をやるかは分からないが、とにかく何か変えてくれるというものだ。そこがヒラリー・クリントン氏にはなかったものだ。

 経済政策の分かりにくさ以上に分からないのが、トランプ氏が外交で何をやってくるかだ。トランプ大統領の誕生で起きる最も大きな変化は、地政学リスクの高まりではないか。

 ロシアや中国と米国との関係は冷え込むだろう。日本など同盟国の現在の防衛力を前提として、これまでの米国の役割を続けるかどうかもよく分からない。

 中国は今年、沖縄県尖閣諸島周辺に公船を大量に出して圧力をかけてきたが、今後はトランプ氏がどのように対応してくるかを見極めようとするはずだ。ただ、トランプ氏という人物は激情型だ。うかつに中国やロシアが刺激をすると、どのような手段に出るか読めない。冷静なインテリ型のバラク・オバマ大統領とはそこが違う。

 地政学リスクは高まるが、その結果、各国がどのように動いていくのか。今は誰にも読めないのではないか。

 日本ではトランプ氏と安倍政権の間に人脈がないと言われるが、何もないわけではない。私には米国議会や政策立案者に多くの知人がいるが、トランプ氏の政策アドバイザーは日本に来て政府関係者と話をしている。悲観ばかりする必要もない。

(聞き手:田村 賢司 )