また、シリコンバレーが移民を排斥すると、世界に「希望の地」がなくなってしまうのではと懸念しています。あそこに行けば一発逆転できる、世の中を見返すことができる、という場所がなくってしまうのです。

 これは、カリフォルニア州だけでなく、世界的にイノベーションの地がなくなることを意味します。これを機に、米国以外の国もどんどんドメスティック志向に変わっていけば、イノベーションの源泉である「コンビネーション」は生まれなくなってしまいます。つまり、シリコンバレーのような化学反応が起きる場がなくなってしまうことは、どの国にとっても大きな損失になるのです。

VCへの課税負担増も懸念

シリコンバレーでは、トランプ氏の大統領就任に反対する人が多いのでしょうか。

伊佐山:シリコンバレーが持つオープンネス(開放性)さえ維持されるのならば、国のトップは誰でもいいと思っている人が多いように感じます。オープンネスとはまさに移民受け入れの土壌を壊さないことですね。

 ここで活動する人は、自分が世界を変えるためには一体何ができるかと常に考えているので、大統領が誰になってもやることは変わりません。

両候補とも、ファンド運用マネジャーが受け取る成功報酬である「キャリードインタレスト」に課す税金の税率を引き挙げると宣言しています。トランプ氏のほうが引き上げ幅が大きいため、ベンチャーキャピタル(VC)の収益が減少することが予想されます。

伊佐山:これは大きな問題ですね。まず、VCとヘッジファンドなどあらゆるファンドを一括りに敵視していることが問題だと思います。例えば、VCの税負担が増えると、ベンチャー産業全体が縮んでしまう危険があります。今までVCは、長期投資なので、キャピタルゲイン課税扱いでした。しかし、「VCは儲けているから税率を上げて、通常の所得税にする」と言われてしまったら、「誰が長期のベンチャーリスクをとるのか?」となりますよね。また、通常の長期株式投資の税率との整合性も取れていません。

 トランプ氏が掲げる政策が全部実現すれば、シリコンバレー経済圏が大きなダメージを受ける可能性があると危惧しています。