トランプ氏が掲げている「移民排斥」について、シリコンバレーのベンチャーはどう受け止めていますか。

伊佐山:シリコンバレーにいると、「あいつはどこ出身の移民だったっけ?」という議論はほとんどありません。移民のほうがマジョリティーなので、ここでは移民を議論すること自体がナンセンスなのです。

 ただ、トランプ氏が掲げている厳しい移民規制政策が実行されれば、人を雇うのは難しくなる、という話は最近よく出ています。外国から気合いを入れてわざわざやってきてPhD(修士号)まで取得した人材は、高いお金を出してでも雇いたい。彼らがそのまま本国に戻ってしまうことになれば、非常に困りますね。

移民排斥は米国経済にも影響

移民が雇えなくなれば、シリコンバレーのイノベーション力がゆくゆく低下してしまうこともあり得ますか。

伊佐山:あると思います。今の米国のGDP(国内総生産)を因数分解すると、20%がベンチャー枠だと見られています。ベンチャー枠の企業の半分の創業者が移民なら、結局、米国のGDPの10%を移民が創った企業が生み出していることになります。これはあくまでも数字上の計算に過ぎませんが。この10%を、移民排斥政策によってゼロにしてもいいのかと、懸念しています。

 世界のGDPランキングを見ると、1位が米国、2位が中国、そして日本、ドイツ、英国と続きます。実はカリフォルニア州単体のGDPは英国と同じくらいあります(2015年は2.5兆ドル)。カリフォルニア州自体が世界ランキング5位の規模があるんです。ハリウッドもありますが、GDPのほとんどを占めているのはIT産業でしょう。つまり、移民排斥によって州自体が危機に陥る可能性がある。

 アップルやグーグル、ヤフーのような企業が将来誕生する可能性が減ってしまえば、中長期的に見た経済損害は非常に大きく、米国の国力の低下にもつながりかねないと思っています。