インフラの充実に注力か

木野内栄治(きのうち・えいじ)
大和証券 チーフテクニカルアナリスト兼シニアストラテジスト。1988年に成蹊大学工学部を卒業し、大和証券入社。『ニュースモーニングサテライト』(テレビ東京)のレギュラーコメンテーター、景気循環学会の理事なども務める。(写真:都築 雅人)

トランプ氏が大統領になったら、日本国内でどのようなビジネスに影響が及びそうでしょうか?

木野内 外交や防衛が注目されていますが、何かがすぐに起きることはないでしょう。まず周辺国が「新大統領はどこまでやれるのか」を瀬踏みする動きに出るはずです。例えば、同盟国の領海にちょっかいを出してみるとか。

 次に想定できるのは為替政策です。おそらくトランプ大統領はドル安を目指すはず。輸出を中心に日本企業にとって厳しい局面になります。

 3つ目のポイントは、「クリントン大統領が誕生することで打撃を受けそうな業種」にはプラスの影響があることです。具体的には金融、エネルギー、医薬品の一部などが該当します。クリントン氏は金融機関の不正を非難し、ヘッジファンドやノンバンクへの規制強化の必要性を説いています。石油メジャーなどエネルギー業界ともつながりが深いので、環境関連には逆風が吹くでしょう。メディケア(高齢者・障害者向け公的医療保険制度)の支給抑制も打ち出しているため、製薬業界にも打撃がありそうです。

 環太平洋経済連携協定(TPP)についてもクリントン氏と意見が異なります。クリントン氏は表面上、反対しているものの、選挙対策に過ぎないという見方があります。しかし、トランプが大統領になれば、TPPは確実に御破算でしょう。

 その次はインフラに注目すべきです。「トランプ氏が何をやるか」を先回りして正確に予測するのは難しい。発言は矛盾しているし、ころころ変わってきました。ただし、信頼できる要素として、「アイゼンハワーへの憧れ」が挙げられます。第2次世界大戦で連合国遠征軍最高司令官を務めたドワイト・D・アイゼンハワー氏は、戦後に第34代大統領に就任しています。米国のヒーローになって(知事、議員、副大統領などの)政治家の経験がないまま大統領に上り詰めた姿を、トランプ氏は自らに重ねている節があります。

 そのため、アイゼンハワー大統領が手掛けた州間高速道路の修繕・拡張を始める可能性があります。 クリントン氏が5年間で2750億ドルのインフラ投資を政策として掲げているのに対して、トランプ氏は「少なくとも倍の公共投資をする」と発言しています。彼は不動産業界でのビジネス経験が豊富です。住宅価格の上昇が米国経済をけん引している現状を鑑みても、大規模な道路整備は彼が熱心に取り組みそうな政策です。建機メーカーにはビジネスチャンスが生まれるかもしれません。

中長期的に見ると「もしトラ」の世界には何が起きそうでしょうか。

 2017年3月から連邦債務上限(国債発行枠)が復活します。民主党のクリントン氏が大統領ではその打開が難しいですが、共和党のトランプ氏が大統領ならば下院で過半数を握る共和党も折れやすいでしょう。

 ただし、どちらの候補が大統領になっても、年齢的に1期4年で退任する可能性が高い。早期にレームダック(死に体)化してしまうと掲げた理想は実現できません。