(写真:PIXTA)

 第2回の記事で触れたSOGIハラ(ソジハラ。性的指向・性自認に関するハラスメント)について、最終回でもある今回はケーススタディもまじえて解説してみよう。

 まずは次のやりとりを読んでほしい。

 「ねぇ知ってる? あの人ってこっちらしいよ」(片手を頬にそえるしぐさとともに)
 「え? そうなの。言われてみたらなんとなくそれっぽいかも(笑)」

 社内で、あるいは飲み会の席でこんな会話で盛り上がっているとき、その場で凍りついている、カミングアウトしていないLGBTの当事者がいるかもしれないと想像したことがあるだろうか。

 連載第1回でも紹介したように、LGBTの社員は、13人に1人くらい、7.6%の割合でじつは社内にもいる可能性がある。そしてそのほとんどが職場ではカミングアウトしていない。

 多くの働くLGBTから聞こえてくるのは、「職場での『ホモネタ』がつらい。LGBTを嘲笑うような環境では、絶対にこの職場では自分のことは話せないと感じる」という悲痛な声だ。

 言っている方からすれば、「ただの冗談なんだからそんなに真面目に反応されても、、」と困惑するかもしれない。それに、これまではこうした話題が、ある種「会話の潤滑油」として機能してしまっていたという側面も否めない。だが、その背後には、これまではイヤだと思っても「おかしい」とか「やめてください」と声をあげられなかったという現実がある。

 2010年代に入って、LGBTをとりまく社会の変化と、当事者の意識の変化がうねりのように起きている。「性的指向(Sexual Orientation):好きになる相手の性別」と「性自認(Gender Identity):自分の性別の認識」=SOGI(ソジ)を尊重してほしい、SOGIに関してからかいやいじめ、差別をしてほしくない、という当事者の切実な声の高まりを受けて、2017年にSOGIハラという言葉が生まれた。

 マタハラ(マタニティ・ハラスメント)という言葉を例にとるとわかりやすい。マタハラという言葉は、10年前にはなかった。被害を受けていた女性たちがその実態をハラスメントと名づけ、広めたことで、社会問題化し、2017年からは法改正を受けて、マタハラ防止の措置義務が事業主に課されるようになった。

 同じタイミングでの男女雇用機会均等法の改正で、セクハラ防止指針が改正され、セクハラの対象はSOGIにかかわらない旨が明記された。また、セクハラの背景としてSOGIハラに該当する言動が盛り込まれ、あわせて周知されている。

 ハラスメントかどうかは、シンプルに判断できる。とても大切な存在や、大事な取引先の社長やその配偶者を相手にしても、同じ言動を行えるかと問われ、「イエス」と即答できない言動は、ハラスメントに該当する可能性が高い。

 LGBTの本人やLGBTが家族や友人、同僚など身近にいる人の場合では、そうでない人に比べて、ホモネタなどSOGIハラへの感度が上がり、「受けたことがある・見聞きしたことがある」という割合が4倍近く高くなるというデータもある(連合「LGBTに関する職場の意識調査」)。

 多くの人がLGBTをまだ身近な存在として感じられていない中では、見えないところでLGBTの社員を傷つけて、うつや離職の原因になっている可能性があるSOGIハラがどんなもので、どんな対策ができるのかについて知識を得ることがまずは重要だ。

 LGBTの社員ものびのびと安心して働ける、心理的安全性が確保されている環境の方が、パフォーマンスも向上するという関連性については連載第1回の記事(リンク)で説明した。

 心理的安全性を簡単に下げてしまう要因である、SOGIハラのケースをいくつか見ていこう。