《STEP3》ハラスメント対策に盛り込む

 「あの人こっち系なんだって(笑)」
 「おまえホモなの? おれのこと襲うなよ」
 「女なのになんでスカートはかないの? おかしくない? もっと女らしくしなきゃダメだよ」

 たとえばこんな会話を職場で聞いたことはないだろうか? いわゆる「ホモネタ」など、性的指向・性自認をからかったり笑ったり、あるいはこれを理由としていじめたりする言動に、「SOGIハラ(ソジハラ)」という名前がついたのは2017年のことだ。新しいハラスメントとして少しずつ認知が広がっている。

 職場のハラスメント対策の一環として、SOGIハラも含めた社内啓発や、相談窓口での対応体制を整えることは、とくにカミングアウトしていない社員から望まれる対応だ。もしカミングアウトが温かく受け入れられて、その人のSOGIが尊重されていれば、SOGIハラは起こりにくいからだ。

 厚生労働省の「モデル就業規則」の今年1月の改正にも、「性的指向・性自認に関するハラスメントの禁止」(=SOGIハラの禁止)が追加されているので下記を参照してほしい。モデル就業規則に入ったということは、日本中の職場でこれを盛り込むことがスタンダードになったことを意味すると言っていい。そのくらい、これまで企業内の日常会話の中で、ハラスメントに相当する言動が頻繁に起こっていたと考えられる。

(その他あらゆるハラスメントの禁止)
第15条 第12条から前条までに規定するもののほか、性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

 日本労働組合総連合会(連合)が公開しているLGBT/SOGIに関するチラシは、A4で2枚にコンパクトに情報がまとまっていて、啓発に使いやすい資料だ。

《STEP4》アライ(LGBTの味方)を増やす

 LGBTの社員がカミングアウトをしても、しなくても安心して働ける職場環境づくりは、一朝一夕にはできない。意識改革にはそれなりの時間がかかるものだ。男女雇用機会均等法が1985年に制定されてから、すでに30年以上たつが、女性であるというだけで生じる働きづらさはまだまだ残っている。企業のLGBTへの取り組みが本格化し始めてからまだ数年しかたっていない。中長期的な視点で、LGBT/SOGIに関する風土の改善に取り組んでほしい。

 その際にキーとなってくるのが、LGBTの課題を自分ごととして解決していこうという想いを持ち、行動する「アライ」の存在だ。英語のAlly/Alliance(同盟)を語源とし、LGBTにとっての味方という意味で使われる。こうした施策を取り入れた企業があることを紹介し、有志の社員を募るなど、自主性を尊重して意識を喚起する方法もある。

 不利益や偏見をおそれて職場で本来の自分をさらけ出すことが難しい多くのLGBT社員にとって、職場にアライを表明している人が増えていけば、それだけ安心感が増していく。アライであることを示すためのステッカーなどのツールを作る取り組みも進んでいる。

上はLGBTに取り組む企業が作成したALLYの資料。下はトロワ・クルールで作成しているアライステッカー。6色のレインボーはLGBTのシンボルとして世界中で使われている。

 LGBTの存在も課題も潜在化している場合が多い現状で、「LGBTが何か困ったときには、助けたいと思っているから声をかけてください」という気持ちの表明として、アライステッカーをデスクや社員証など職場で見えるところに貼るだけでも、課題解決のアクションとなる。

 数字は一つの目安でしかないが、たとえば、アライの役割をしっかりと理解した上で、そこにコミットしてアライを表明する社員が全体の30%を超えると、だいぶ職場の空気がLGBTフレンドリーなものに変わっているだろう。

 「アライを表明する」と聞いて、何か特別なことをしなければいけないのではないかとか、SOGIハラをしないつもりでも、もしかしたら知らずに傷つけてしまうこともあるかもしれないから、アライステッカーを貼るのはためらう、という声も聞く。

 しかし、まずは寄り添う気持ちやコミュニケーションが大切だ。LGBT/SOGIに関する課題が職場の中で可視化されるようになってきたのは最近のこと。もし気をつけていても間違ってしまったら、素直に「ごめんなさい」と伝え、改善していけばいいと思う。それくらいの気軽な気持ちで、だが課題解決の意志を持って、アライであることを示す人が増えていくことを期待している。

 アライとしての行動には、たとえば、アライステッカーを貼る、LGBTに関する前向きな情報をシェアする、LGBTやアライについて職場内で話してアライを増やす、SOGIハラを見かけたら注意をするなどが挙げられる。いずれもハードルを上げずに、身近にできる小さなことから始めてほしい。

 LGBT対応は上記で説明した以外にも、採用での配慮、人事制度の改定(同性パートナーを福利厚生に含める、トランスジェンダー対応)、LGBTコミュニティの支援やサービスの見直しなど多岐にわたる。自社の風土や業種に合わせて、着手しやすいところから少しずつ、かつ継続的に取り組みを進めていくことで、企業価値を上げていくことができるのだ。