3)リスク対策

 LGBTに対して差別的だったり、対応の方向性を間違ったりすると、SNSでの炎上や訴訟のリスクがある。まだ記憶に新しい、国会議員・杉田水脈氏によるLGBT差別の雑誌寄稿問題は、SNSでの炎上にとどまらず、大手メディアでも連日報道された。少し文脈は違うが、もしこのようなことを企業のトップが引き起こしたとなれば、経営者としての資質を問われ、辞任に追い込まれたり、あるいはブランドイメージを損ね、不買運動などにもつながりかねない事態となるだろう。

 実際に、杉田氏の主張を擁護する特集を組んだ雑誌『新潮45』が、その中で「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」があったとして、新潮社は休刊の判断をくだした。その背景には、作家たちからの批判や「新潮社では書かない」といった投稿があったり、しばらくは新潮社の本を扱わないと表明する書店が出てきたりしたことで、文芸部門のビジネスへの影響があったことが推測される。

 2017年には、フジテレビのバラエティ番組で「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」という、ゲイの存在自体をからかうような差別的なキャラクターが30年ぶりに復活し、炎上した。LGBT当事者と支援者がフジテレビに抗議し、社長が謝罪した。

 フジテレビのケースは、LGBTをとりまく社会の前向きな変化をとらえきれていないがために起こった炎上であったと言える。社内でLGBTの啓発が進んでいたり、あるいはカミングアウトして自分らしく働く当事者がもっとあたりまえの存在として社内にいたりしたら、大炎上する手前で未然に防げたことだったかもしれない。

 トランスジェンダーの社員と職場の間で待遇をめぐってトラブルになり、会社を訴えざるを得ない状況まで追い詰められて、実際に訴訟になっているケースも最近増えてきている。これもやはり、自分らしさを求めて働きながら性別移行にトライする当事者が増えつつある証拠だ。企業側はこのことに対して無知・無理解でまったく準備ができておらず、結果としてひどい対応をしてしまっている場合もあるのだろう。

 働くLGBTも、消費者としてのLGBTも、いずれの場合も社会の大きな変化のうねりの中で、意識に変化が起きている。これまで何も対策をとらなくても問題がなかったからといって、今後も対応しなくていいということにはならない。LGBTとしっかりと向き合っていくことで、こうした不要な炎上や訴訟を避けることができるのだ。

 LGBT人材にぜひこの会社で働きたい・働き続けたいと思ってもらえる、持っている能力を最大限にひきだせる、まずい対応をすることによるリスクを防げるという3つのメリットについて説明した。裏を返せば、LGBT対応を何もしないということは、これらのメリットを手放すことになる。競合企業がどんどんLGBT対応を進めていけば、対応の差は開く一方で、働くLGBTや支援者にとって魅力的な職場やブランドとは感じられなくなるというデメリットが生じてしまう。LGBT対応はもはや待ったなしの状況だ。

 次回は、実際にLGBT対応を進めていく際のステップについて解説する。