日経ビジネスが表紙に大きくLGBTの文字をかかげて特集した号から3年がたつ。企業の経営層でLGBTという言葉を知らない人はほとんどいないだろう。LGBTについて新しい経営課題としての認識はビジネス界ではかなり広がってきた。(なお本連載では、性的マイノリティの総称として「LGBT」を使っている。)

 では、実際にLGBT対応を進めている会社がこの3年で急激に増えたかというと、
そうではない。まだ一部の大企業・上場企業を中心とした取り組みにとどまっているのが現状で、ほとんどの中小企業では対応は未着手だ。

 LGBTは7.6%、13人に1人の割合で存在するという調査結果が出ている(電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT調査2015」)。そう言うと、「本当にそんなにいるの?」と驚かれることも少なくないが、複数の調査で5%〜8%というデータが出ている。まだ驚かれてしまうくらい、すでに社内や顧客の中にもいるんだという身近さを感じられていない人が多いということでもある。

 開催が2年後にせまる東京オリンピック・パラリンピックで、組織委員会は物やサービスを調達する企業が守るべきガイドラインである「調達コード」に、性的指向(好きになる性別)・性自認(自認する性別)に関する差別禁止、ハラスメント禁止を盛りこんでいる。LGBT差別禁止と読み替えることもできる。

 ここでいう企業には、原材料を製造している企業などのサプライチェーン全体が含まれることから、オリンピックと関わって仕事をする多くの企業にとっては対応が必須となり、これからますますLGBT施策が進んでいく流れにある。

 また、直近にも東京都で大きな動きがあった。10月5日、東京都議会では「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」が成立した。これにより、東京都の事業者は「性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いの禁止」が課せられることになり、LGBT対応は東京都の全ての企業にとって無視できない経営課題となった。

 経験や属性など一人ひとりの違いを企業の競争力につなげる「ダイバーシティ2.0」の考え方を、経済産業省が提唱している。LGBTに関わる性の多様性は、これら数多ある違いの一部だ。だが、見えづらい違いであるために、どうしても取り組みのプライオリティが低くなりがちだ。

 今回は、企業がLGBT対応を進めることによって得られるメリットを「LGBT人材の採用・離職防止」「パフォーマンス向上」「リスク対策」の3つのポイントにしぼって解説してみよう。