番組内だけではなく裏方でも障害者を積極雇用

大会後、チャンネル4に今も「レガシー」として残っていることは何でしょうか?

ブルック氏:私たちは常に多様性に強くコミットしてきました。おそらく、英国内で最も障害と障害者について放送してきたテレビ局でしょう。しかし、2012年大会以降、1段階レベルが上がったと思います。最も重要なことは、パラリンピックでは半数のプレゼンターが障害者でしたが、このプレゼンターたちに大会後、スポーツと全く関係のない仕事をしてもらっていることです。時事ドキュメンタリー番組を率いるキャスター、歴史ドキュメンタリーのプレゼンター。また、「チャンネル4ニュース」で、スポーツ報道のレポーターをしている人もいます。多大な成功を収めました。

 もう一つは、障害者たちに通常の放送に出てもらうことです。毎晩放送されている、若者向けの人気ドラマシリーズ「ホリーオークス」には、現在車椅子を使用するキャラクターが登場します。車椅子のシーンも出てきますが「障害者だから」ではなく、彼らは同じ人間で、そして演技がうまいから出ているのです。こうした試みが、局内の多くの番組で「標準化」され、当たり前になっています。

 チャンネル4はパラリンピックの開催される年を「障害イヤー」と位置づけ、パラリンピックのみならず全体の放送で、障害者の人たちを積極的に活用するというターゲットを掲げている。今年は局内の20番組で、障害を持つ出演者を倍増し、制作面でも、障害者の積極登用を行った。

ブルック氏:チャンネル4ではすべての番組制作を外注で行っていますが、制作に当たる20人の障害者プロデューサーのキャリア促進を実現しました。インターンの3分の1も、障害者を選びました。これらターゲットは9月までに達成しました。楽な試みだったから早めに実現したのではなく、障害者たちの仕事が素晴らしかったからこそ、ここまでできたのです。オンエア上で視聴者が障害者を見る機会を増やすだけではなく、裏方でももっと一緒に働く機会を増やすことができれば、こうした流れはもう逆行することはありません。もっともっと、こうであって欲しいと人々は感じるはずです。こうして、世界は変わっていくのです。

放送局には使命があると考えますか。

ブルック氏:当然です。メディア企業や放送局は、社会に多大な影響をもたらします。私は「人生に存在すること」は、テレビの世界にも存在すべきだと考えています。英国では20%、つまり、5人に1人がなんらかの障害を持っています。テレビを見ていたら、そうとは信じられないでしょう。印象として、人口比でもっと少ないと感じるはずです。その認識を変えなければなりません。慈善事業だからやるのではないのです。

慈善事業としてではなく、純粋に即戦力として障害を持つ人たちを雇用し始めて、その才能に驚くことはありましたか?

ブルック氏:もちろんです。多様性を持つ人のアイデンティティの根幹は、多くの場合、大きな問題を乗り越えて来たことにあります。そのため、何も乗り越えるものがなかった人に比べて懸命に働き、回復力が強く、活力に溢れています。おそらく障害者の場合、この傾向が顕著です。雇用主としては、障害に応じて臨機応変に対応しなければなりません。他の人よりエネルギッシュでも、休憩の頻度が多く必要なことなどもあります。障害を持たない人に比べ、100%は働けないということも確かにあるかもしれません。しかし、それはそのほかのことで補強できます。

 典型的な例で言うと、視覚障害を持つ人は、聴覚が非常に優れている場合があります。テレビ制作に関して言えば、視覚障害のある人の方が、ない人よりも音響技術において優れているケースもあるでしょう。障害よりも、その人の優れた才能に焦点を当てることで、実際はほかの人よりも能力が高いこともあるわけです。

「障害」と言われるものは、実際は利益に繋がると。

ブルック氏:多様性は「売り」になるのです。学術研究でも示されていますが、労働力に多様性がある企業の方が、売上高も多くなり、株価も長期的に上昇する傾向がある。なぜか。企業が進化するには、どのような業種であっても、なにがしかの問題解決をする能力は必要です。背景が異なり、様々なアイデアを持つ人たちに問題解決にあたらせると、色々な結果を導き出すことができる。時には、多様性をマネジメントするには多大な努力が必要になることは否定しませんが、それを乗り越えれば、これまでにないような、少し変わったより良い結果を得ることができるのです。