チャンネル4 ダン・ブルック氏インタビュー
英テレビ局チャンネル4のダン・ブルック氏が、「スーパーヒューマン」CMの意義を語る

オリンピックはパラリンピックの「前座」

 パラリンピック競技自体はエリートスポーツで、パラリンピアンたちはオリンピック選手に劣りません。最高峰のアスリートたちの競技は、一般市民が思ったよりも遥かに激しい競争を伴うものでした。競技を高品質で沢山放送したことだけでも、従来の放送とは違いました。しかし、我々が「障害者と非障害者の能力に違いはない」と前面に打ち出し、それが視聴者に伝わったことは、とても斬新なことだったのでしょう。プレゼンテーションも自信に満ちたものでしたし、広告もパラリンピアンをヒーローとして描く、とても挑戦的なものでした。

 オリンピックの直後、広告に「(オリンピックよ)前座をありがとう」と掲げました。多くの英国人があれを見て「あんなに自信に満ちたことを言うのなら、パラリンピックはどうも凄いらしい」と思ってくれたのでしょう。実際、視聴者の心は、予期していなかったものに圧倒されました。以前、英国でパラリンピックはオリンピックの「小さな従兄弟」みたいなものだったのが、いまでは「(同等の)兄弟」とみなされています。

 今年のリオ大会でもこれは継続されましたが、こちらは困難が伴いました。自国開催という利点がなく、4時間の時差は、かなり大きな問題でした。ただ、一度放送したことがあるので勝手はわかっていましたし、(2012年当時)新しかった試みも、さらに進化させました。番組に出演する障害者の数は(前回の)半分から3分の2に増やし、制作に携わる障害者スタッフの割合は、リオ大会ではロンドン大会よりかなり多い全体の15%にしました。

 リオ大会の視聴率は、特に若い人たちの間ではロンドン大会と同等でした。これには、本当に驚きました。地元開催ではなく、時差もあり、放送の多くが英国時間の午前2時以降であったにも関わらず、です。

 リオに到着して数日後、オーガナイザーが「リオのスタジオを回ってきたが、新しい潮流を見たよ」と言うのです。「ロンドンではパラリンピックを放送する放送局の中で障害者プレゼンターがいたのはチャンネル4、1社だけだった。今、リオにあるすべてのスタジオを回ってきたが、一つ残らず障害者の人がいた」と。まるで、目の前で世界が変わるのを目撃したようでした。

「スーパーヒューマン」のコンセプトと、反応について教えてください。

ブルック氏:パラリンピアンは「エリートアスリート」であり、オリンピアン同様にハイ・パフォーマンスな競技者であることを人々に見せました。「スーパーヒューマン」というコンセプトは、アスリートではない障害者にも当てはまります。例えば、オフィスで働いたり、歯を磨いたりといった日常の生活が困難なほどの障害を持っていたとしても、それを克服できる障害者は、高飛びや、速さを競うレースができる障害者と同じように「スーパーヒューマン」であると考えました。

 パラリンピックの機会を通じて、障害を持つ人たちの凄さを伝えたかった。「なぜそんなことを」と問われるかもしれませんが、私たちは企業として、社会的な影響力を持ちたいと考えています。単なる営利事業ではなく、世界をより良くしていきたい。これが、社の理念の一部です。

 人々はパラリンピックに圧倒されました。そして、障害を持っている人も、そうでない人も、こうも感じたのです。「彼らがあんなにすごいことをしているのに、自分は一体、人生で何をやっているのか」「自分も、もっと何かすべきではないのか。不満を言うのはやめよう。彼らを見るが良い」と。

 そして、非常な高揚感をもたらしました。私たちがよく聞くのは、学校で教師たちが、障害について教えるためだけではなく、あきらめずに努力をし、人生に前向きに立ち向かう事例として、パラリンピックについて教えている話です。正しいと思うことを続けてみたら、この国で成功した――。パラリンピックは、そういう例だと思います。

 チャンネル4は常にリスクを負うことで知られています。誰かが「そんなことはできないだろう」と言い出せば、即座に「やってやろう」というインセンティブになる。私たちは企業理念と共に、人間としての勘を信じています。