2012年ロンドン五輪・パラリンピックから「レガシー」について考えるシリーズ。今回は当時、英国でパラリンピックの放送を担当したテレビ局「チャンネル4」を取り上げる。

 ロンドン大会においては、筆者がテレビディレクターとして度肝を抜かれた2つの映像があった。まず、英エリザベス女王が、英国が世界に誇るスパイ映画のヒーロー、ジェームズ・ボンドと共演するオリンピック開会式の映像だ。

 映像はこちら→James Bond and The Queen London 2012 Performance

 そしてもう1つが、パラリンピック放送を担当した英テレビ局・チャンネル4のCM「スーパーヒューマン」である。

 映像はこちら→Channel 4 Paralympics - Meet the Superhumans

 それまで英国でのパラリンピック放送はBBCが行っていたが、2012年の大会はチャンネル4が放送権を得た。パラリンピックを「オリンピックのおまけ」ではなくメジャー大会として大々的に放送。それにあたり、障害者アスリートたちの「disability=障害」ではなく、彼らの圧倒的な「ability=才能」を、ヒップホップ・グループ「パブリック・エネミー」の挑戦的な曲に乗せて見せつけた革新的なCMを制作した。アスリートたちを「障害者」ではなく「スーパーヒューマン」と位置付けた戦略は、国内外から高い評価を得ている。

 チャンネル4の財源は広告収入だが、非営利法人が運営する英国の「公共サービス放送」である。放送理念には「革新性」の提供や、「時事性のある事柄について、世論を活性化する」「英国内の多様性を反映する」「非伝統的な視点を擁護する」などと記されている。

 放送理念にある通り、チャンネル4は2012年パラリンピックにおいても、画面に登場するプレゼンター(キャスターやリポーターなど)の半数を障害者にするなど、画期的な戦略を次々と打ち出した。それまでは、英国には障害者のテレビキャスターは、わずか2人しかいなかったと言う。

 パラリンピックの放送がチャンネル4、そして英国に残した「レガシー」とは何か。チャンネル4でマーケティング・プレスを担当する幹部で、2012年のパラリンピック放送の立役者、ダン・ブルック氏に聞いた。

2012年のパラリンピック放送は、高い評価を受けました。

ダン・ブルック氏(以下ブルック氏):それまで英国では常に、日本のNHKに相当する英BBCがパラリンピックを放送してきました。私たちが入札に成功した大きな理由は、プレゼンターの半分を障害者にすると公約するなど、障害者の放送参加を計画したからだと思います。才能ある人材を探し、育成しなければなりませんでしたが、大きなインパクトをもたらしました。テレビを見ていた人たちは障害者アスリートを見て、さらに障害者のキャスターも見るという、これまでの放送との違いを目の当たりにしたのです。従来にはない手法でしたが、このことが放送に、ある種の「真実味」をもたらしました。

 チャンネル4の理念に基づき、全社の資源を総動員して、パラリンピック放送をできる限り大きなものにしようと試みました。BBCはパラリンピックを、オリンピックよりも小さな「2番手」イベントと捉えていました。しかし、私たちにとってパラリンピックは、初めから「1番手」だったのです。