訴訟を通じて離脱の意味を改めて議論したい
この訴訟で最も成し遂げたかった事は何だったのでしょうか?
これで初めて離脱の戦略、そして今後について、正直な、成熟した大人の議論ができるようになります。離脱を問う投票までの間、こうした議論はなされていませんでした。
人々は本当に離脱が何を意味するのかを知る必要があります。英国では離脱について「ソフト(※単一市場に残りつつ、移動の自由を一部受け入れる)」または「ハード(※単一市場を離脱し、国境管理も独自に行う)」いずれかの方法について論じていますが、EUはそれ以上の「容赦ないブレクジット(離脱)」に言及しています。あまりに複雑な問題が絡み、他に離脱する国も出てきかねないからです。
欧州は「ソフト」での離脱には応じないでしょう。つまり、欧州経済、安全保障、雇用、投資、インフラなど、すべてが影響を受けることになるのです。私は、情報や議論の無さを非常に懸念し、法的な確実性と、議会討論の機会作りに貢献したいのです。
政府がハードの道を選べば、我々は大きな打撃を被る危険があります。私は国民投票を再度行う事にためらいは感じますが、総選挙の可能性は否定しません。
英国のEU離脱論議の行方は、日本でも非常に懸念され、世界的な注目を集めています。
私はここで流れを止め、想定し得る結果について、きちんとした議論が必要だと訴えたかったのです。私は残留に投票しましたが、残念なことは、確かにEUには問題があり、(残留すれば)英国はその改革のリーダーとなり得たでしょう。欧州と共に、移民コントロールや安全保障について議論することができました。
英国は、自国民のみならず、欧州そして世界を失望させました。なぜなら、これは経済のみならず、安全保障の危機だからです。EUから離脱することで、世界の安定は非常な問題を抱えてしまいます。
ミラー氏は、離脱を問う国民投票そのものの信憑性も疑問視している。国民投票はキャメロン前首相らにより、保守党内での権力争いを収める道具として利用されており、離脱派が多数を占めると想定もしていなかったため、極めてずさんな法整備がなされた、と指摘する。
国民投票の結果は「勧告」にすぎない
ミラー氏:2015年の国民投票法は、非常にいい加減に制定されています。もし本当に投票を念頭に入れ、結果を遂行するつもりであったのなら、そのように明文化されていたはずですが、実際は、(国民投票の結果は)「勧告である」とされています。キャンペーンを行った誰もが市民に対し「これはあくまで勧告です」と明言していません。人々は騙されたのです。それこそが私の言いたいことです。すべての人たちが嘘をつくことをやめ、法律条文、またそれに準ずるプロセスを遵守するべきなのです。
離脱を問う国民投票を実施した当時の政権について、どう思いますか?
ミラー氏:まるで「少年たち(キャメロン前首相以下、当時の政治家ら)」が、権力の座、マジョリティー(多数派)に居座り続けるため、そして、保守党内の亀裂を修復するために、政治と権力で遊んでいたようでした。
個人的に離脱投票は、国民や国にとっての最善の策を全く考慮していないものだったと思います。だからこそきちんとした計画や議論がなく、国民投票法もきちんと制定されていませんでした。国民に色々な約束をしながら、実際には実行に至らないものだと思い続けていたのでしょう。
問題は、彼らが「国民の温度」を読み誤ったことです。どんなに人々が傷ついていたか、テクノロジー(革新)やグローバル化などに、どれほど懸念を抱いていたか。私たちが皆直面している問題を見据えずに、(国民投票が)楽な答えであると結論づけ、問題を悪化させたのです。
Powered by リゾーム?