以下はレゴ本社より、キャンペーン停止発表当日届いた、筆者への取材の回答だ。

 「我が社の最大の目的は、レゴで遊ぶクリエイティブで素晴らしい体験を、世界の子供たちのために作っていくことだ。このために、私たちは子供たちの言葉を、時間をかけて聞いている。彼らの親や祖父母が感じることを私たちに語りかける時にも同じくらいの時間をかけ、注意深く聞いている。世界の消費者から、当社と我々のブランドに気持ちを表現してもらえることは、我々を謙虚にする。そして、またとても光栄なことでもある」

 「毎日世界から寄せられる信頼に応えるため、我々は最大の努力を続ける。デイリー・メールとの協力は終了し、今後同紙と共にプロモーション活動を行う予定は当面無い」

 ジョーンズさんからの手紙が直接の理由であることを言及してはいないが、11月12日、英国の大手新聞・テレビは、レゴのデイリー・メールとのプロモーション停止のニュースを相次いで報じた。

 ジョーンズさんの手紙の最後には#stopfundinghate「ヘイトへの投資を止めろ」という意味のハッシュタグが付いている。「Stop Funding Hate」とは、EU離脱を問う国民投票の選挙キャンペーン中から、一部メディアによって煽られてきた、特定の人々に対する憎悪を止める目的で設立された、非営利団体である。

 今年8月にこの団体を設立したメンバーの1人、ロージー・エラムさん(30歳)は、活動の目的を次のように語った。

非営利団体「Stop Funding Hate」のエラムさん

 「私たちは無論、表現と報道の自由を信じ、重んじている。しかし、同時に人々が社会において、ヘイトスピーチに晒されることなく、安心して暮らして行けることも信条としている。報道の自由と同時に、消費者の自由、ヘイトに対する意見を述べる自由も存在すべきだ」

 「(離脱投票キャンペーンの時には)反外国人というレトリックが頻繁に使われた。離脱投票はEUに加盟し続けるか否かを問うものだったのに、キャンペーンでは、移民や欧州各国で問題となった難民危機が主な題材として取り上げられ、分断的で憎しみに満ちたレトリックが繰り返された。言葉使いがとても過激になり、難民をゴキブリ呼ばわりするなど、その後も状況は悪化した」

 「特定の新聞が、明らかにヘイトスピーチを展開し、国民投票の時にピークに達した。多くの人々が(そうしたヘイトスピーチに)直接影響を受けたと感じ、この時期にヘイトクライム(憎悪による犯罪)も急増したこともあって、何か行動を起こさなければと感じた。(略)当面の目的は企業に、ヘイトへの投資をやめさせること。長期的には、ヘイトスピーチの撲滅である」

 こうした動きに呼応するセレブもいる。ガーディアン紙など複数の報道によれば、難民擁護派であるサッカーの元イングランド代表、ゲーリー・リネカー氏は、自身がCMに登場するポテトチップスの英メーカー・ウォーカーズに対し、デイリー・メール同様、移民・難民敵視を書き立てる「ザ・サン」への広告掲載をやめるよう働きかけたという。同氏はStop Funding Hateのキャンペーンにも賛同し、レゴの決断についてもツイートしている。

 筆者は以前、EU離脱を問う国民投票の最中、白人至上主義者と見られる英国人の男による議員殺害と、メディアによる憎悪拡大の功罪について書いた。(「英国の女性議員殺害が問う“憎悪扇動”の大罪」2016年6月20日掲載)当時、離脱関連取材で訪れた英国各地では、保守系タブロイド紙や一般紙に記載されていた、移民を一方的に悪者に仕立てるポピュリスト政治家の言葉の数々が、多くの離脱派市民の口から、そっくりそのまま聞こえてきていた。前述のエラムさんも、投票後に急増したヘイトクライムについて、新聞に掲載されるヘイトの言葉が、人々の行動を肯定してしまう危機を感じたと指摘した。

 世界を震撼させた米大統領選でも、トランプ支持派の集会で、移民や女性、障害者などに対する聞くに堪えない「仮想敵」への憎悪がスローガンとしてメディアを通じて垂れ流され続けた。米ABCニュースのサイトでは、選挙後、トランプ氏がキャンペーンで多用した、メキシコ系移民の排除を意味する「壁を作れ!」というスローガンが、ミシガン州郊外の中学校で生徒らによって昼休みに合唱される様が確認できる。